それは、愛に腹を空かした時。 リボーンが、おかしな瓶を持ち出した。 いつつの数字をかぞえても 久々の再会だというのに、ツナの態度は以前とは違いディーノに一線、張っていた。 今はもう、弟分や兄弟子ではなく、恋人同士だというのに、その態度はひどく素っ気無いものだった。 以前は、もっと素直に甘えていたのに、彼の身に何があったというのだろうか、と、 ディーノは決して考えたくない、嫌な予感で頭が一杯になっていた。 (―オレに飽きた、とか…?) もしくは、他に好きな奴ができたのかー いずれにしろ、ツナの愛が冷めてしまったらと思うと、恐ろしくて仕方がない。 リボーンに出会って、色々な修行をして、強くなってからは恐ろしいものなど何も無いと思えるほどになったが、 それだけはどうしても、自分に恐怖を与えた。 「ツナ、」 抱きしめてみても、ツナは抱きしめ返してはくれずにいた。 困ったような笑顔を向けて、ディーノの胸へと顔を隠してしまったのだ。 もっと深く触れたくて、ツナの顔を優しく胸から離し、そっと唇に近づければ、いつものようにそれを受け入れてくれるー と、ディーノは思ったのだが。ツナは焦り、顔を背けた。 「―…?ツ、ツナ?」 「あ、…」 ツナは瞳を大きく丸めて、悲しそうにそれを揺らめかした。 濡れたそれからは、あと少しで溢れ出てしまいそうなものがあった。 ディーノは驚いていたが、しかしツナがあまりにも、(自分の行動に)ショックを受けていたらしいものだから、 無理に微笑んでみせた。しかし、ツナの瞳は更に揺らめいてしまった。 「―…、の、飲み物、取ってきます」 するりとディーノの腕を抜け、ツナが去ってしまった後のディーノの胸は、ぽっかりと穴が開き、それはそれは寂しくなっていた。 最悪な事態を思い、ディーノが身じろぎもできずにいた時であった。 気配を出さずに帰って来たリボーンが、ちょこんとディーノの前に立つ。 「―…リボーン。ツナ、何か変わったことでもあったか?」 「ないぞ。他に好きな奴でもできたんだろ」 それを言うな、と思ったがー確かに、その通りかもしれなかった。 ツナの態度があんまりで、ディーノは反論というものが出来なかった。 恋人同士なのに、再会のキスも交わせないはどうしてか。 抱擁は一方的で、困った顔をされるのはどうしてか。 避けられているような気がするのは、どうしてなのかー。 それにピタリと当てはまるリボーンの答えも、自分の予想も、受け入れたくはなかった。 ディーノがどうしようもなく、苦しそうに眉を寄せると、リボーンはコトリと、彼の前に一つの瓶を差し出した。 何色もの飴玉は、色鮮やかだったが、ディーノは今、どんなに素晴らしい景色や、世界のあらゆる宝石を見ても、 どんなにーどんなに煌くものを見たって、何の感動もできないと思った。出来るわけがなかった。 「惚れ薬だ」 「―…は…?」 「一粒、お前にやる。ツナに飲ませれば、お前の事が好きで好きで堪らなくなるぞ。」 いつものように淡々と話すリボーンの言葉を、信用しないわけではないが、それでもやはり、信じがたかった。 これがもしも、本当ならばー。 ディーノがそれを見つめていると、リボーンが一粒、飴玉を出し、ディーノの手に乗せた。 ツナがカチャカチャと、不安定にお盆の上のグラスを揺らしながら戻ってくると、 ディーノは早速、飴玉をツナの口に入れた。 「あーん」と言うと、ツナは素直に口を開いたのだから、簡単だった。 そういうところも、可愛くて仕方なかったのだ。それなのにー。 褪せてしまったかもしれないツナの気持ちが悲しくて、ディーノは少し、俯いた。 ツナは座り込み、ジュースに口を付けようとするが、飴玉の存在に気がつき、グラスを戻す。 まだ、変わりはないらしい。 目を離さずに、じいっと見ていると、やがてツナと目が合うが、すぐに恥ずかしそうに視線を逸らされた。 (そんなにすぐには、効かないか…) リボーンに受けた説明では、飴玉が口の中から消える頃、効果が現れるらしい。 してその効果は、5時間だけー…。 5時間経ったら、別れを切り出されるかもしれないのだ。 重たい闇が、胸を支配してしまいそうになった時、ツナの口から、カリ、と音がした。 飴が、無くなるー。 ディーノは何も話さずに、ただ視線を送っていた。続けて、ガリ、ガリ、と音が聞こえた。 モグモグとツナの口が動かされ、とうとう、動かなくなった時― ツナは、体を硬直させた。 それは、薬が効いてきた事を現していた。 一瞬後、ツナはディーノにべったりと張り付いていた。 それはまるで、以前のツナに戻ったかのようだった。ぎゅうとディーノに抱きつき、そのまま離れない。 さっきまで、ディーノから抱きしめても、困った顔しか見せなかったのに、この変わりようだ。 抱きしめ、頭を撫でてやると、気持ち良さそうに、ツナは頭をディーノの手に擦り寄せてきた。 「―…オレにこういうことされんの、嫌じゃないか?」 「ディーノさんに抱きしめられたり、撫でられたりするの、大好きー…」 きもちい、と呟き一層強く抱きしめられたものだから、ディーノは嬉しくて仕方なかった。 今だけは、ツナの頭は自分一色なのだ。そう思うと、堪らないものがあった。 ツナはその後も、べったりだった。 大好き、愛してる、ディーノさんだけー、と、望んでいた言葉を、ツナは次々とくれた。 そしてディーノが少しでも体を動かせば、行ってしまうのだと勘違いして、 行っちゃいやだ、と、悲しい顔をして、ディーノの胸に潜り込む。 「―…行かねぇよ、どこにも…」 だから5時間経っても、お前も何処にも行くなと、言ってしまいそうになった。 ツナが好きで好きで堪らずに、手放したくなくて、愛していてほしくて。 ツナ、と呼べばすぐに顔を上げ、ディーノが唇を奪う前に、ツナに唇を奪われた。 デイーノの首に手を回したツナは、まるで、飢えていたかのようにディーノを求めた。 拙いながらも、求めていることが伝わり、ディーノの心を満たしていった。 情欲に駆られ、ツナを渇望していた心は全く、加減というものを知らない。 ボタンを外しながら、より深く口付けると、激しいキスに後ろに傾いていたツナの体は、すぐに完璧に倒された。 はあ、と息を吐き出した頃には、ツナのシャツは見事に肌蹴ていた。 久々に見た白めの肌が、更なる欲望を駆り立てる。 ツ、と、肌の上に手を這わせ、白の上の一点に指が触れると、ツナは敏感に体を揺らした。 その様にディーノは息を飲み、もう一度唇を貪りながら、そこを弄ると、か細い声がツナから漏れた。 「ん…っ、ディーノさん…」 待って、と、やんわりと胸を押し返すと、二人は共に熱っぽい視線を交わした。 ツナがぎゅうと首に抱きつき、うなじの辺りに手を這わし、そっと、そこからシャツの中に侵入した。 「ディーノさんも脱いで」 耳元で可愛い恋人に囁かれ、ばさりと黒いティーシャツを脱ぎ捨てると、すぐにツナを組み敷いた。 余裕がないー。 今の自分は、正にそれだった。 もうすっかりいい大人になったと思っていたが、こんなにも心を乱してしまって、 がっついてしまって、と、自分を非難する気持ちもあるが、仕方がない。 どうしたって止められないのだから。 所々に愛撫を施していくが、ツナのそれも、そしてまた自分も、既に吐き出したくて仕方がない状態になっていた。 もうすぐにでも、どうにかなりたいーというのは二人とも明らかであった。 それでもわざと焦らして、そこだけは触らずにいると、ツナが堪らず、言葉を漏らした。 「あ、もう…っ」 「…ん?」 触ってーディーノさんに触って欲しくて、欲しくて、ということを告げ、ツナはそろりとディーノのものに手を伸ばした。 爆発しそうなそれに軽く触れただけで、ディーノは反応を見せた。 ディーノもツナに触れると、ツナはビクンと体を跳ねて腰を捻らせた。 「や…っ」 「や?」 「そうじゃ、なくて…っ」 ディーノさん、と、切なげに見上げられ、ディーノは敵わずに、 扱きあげて一度、白濁したものを吐き出させてやった。 「はあ…っ」 頬はほんのりと染めあげられ、息を切らし、薄い唇から漏れる吐息は最高に甘く、 ディーノは堪らず、喉を鳴らす。 色香を十分に漂わせた体を全てディーノに差し出すように、ツナは彼の手を胸に持って行き、 鼓動のする辺りに押し付けた。 「ディーノさん大好き…」 涙で濡れた瞳をぼうっと熱くさせながら、ディーノの手を口まで持っていくとそれにキスをした。 ちゅ、ちゅ、と全ての指をしゃぶるようにしている。 愛しくて、愛しくて、これが一時の夢でないのならいいのにと願わずにはいられなかった。 「ツナ…ツナ、ーオレのものだよな?ツナはいつだって…」 「はい…」 「5時間後も、ずっとー、ずっとオレだけのものだって約束して…」 5時間後も50時間後もずっと、ディーノさんだけ…」 ―こんな所で約束させたって仕方ないことは分かっているのに、 それでも言わずにはいられなかったし、ツナの言葉も嬉しくて、嬉しくて。 薬のせいだなんて、忘れてしまいたい。 ツナの愛の溢れた言葉や行動、火照った体に我慢も限界で、 ツナの秘部に己の欲望を突きつけると、そのまま貫いた。 ツナが声を上げ、自分の与えた快感に悶える姿をどれほど望んでいただろうか。 ぐちゃぐちゃに溶けてしまいそうになるほど、激しく中を擦ってやると、ツナは、もっともっととせがんでくる。 いつまでだってそうやって、求めていて欲しい。 「あっ、あっ…ディーノさ、ん…っ、きもちい…っ」 「ツナ…、っ、」 好き、好き、と、ツナは惜しげもなく、ディーノに愛を曝け出すものだから、 ディーノは元から加減が効かないというのに、更に溺れて欲しがるままにツナを求めた。 めちゃくちゃにキスを貪ってしまったし、むちゃくちゃに突き上げてしまった。 一度達してしまっても満足はいかずに、何度も、何度もツナを求めた。 貪欲な愛も口から出てしまったが、ツナはそれにも全て、応えてくれた。 流石は、リボーンの持ってきてくれた薬―。 「…ディーノさん…くるしい…」 ベッドの中、ぎゅうとディーノに抱きしめられて、ツナは思わず口に出した 。だが、緩める気配はない。ツナもディーノを抱く腕に力を込めて、瞳を瞑った。 ディーノはふわりと、ツナの頭を撫でる。 もうすぐ、5時間が過ぎるー 「……ディーノさん」 「ん?」 寝ていなかったらしいツナは、言葉を出してもディーノの胸の中に隠れたままであった。 「―…すみません…」 「―……」 ああ、薬が切れたのかーとディーノは思った。 此処から先は、耳を塞いでしまいたい。 聞きたく、ない。 さっきまで大好きだと、熱っぽい瞳で自分を見ていた少年が、今はか細い声で、謝ってくる。 謝ることなんて、何があるというのだろう。 別れの言葉なんて、言わせたくはないし、言わせはしない。 「…薬なんか、飲んでない…」 「―…は…?」 「あれはただの、飴玉なんです…」 ツナの言葉が理解できなくて、ディーノはポカンとしてしまった。 ツナはディーノの胸から離れ、上半身を起こした。 続いて、ディーノも。 「―…ずっと、抑えてたんです。甘えないように、求め、ないように」 「…なんで」 「ディーノさんに、嫌われたくないからに決まってるじゃないですか…」 ツナの言葉に、ディーノは絶句した。 どうして自分が、ツナを嫌うというのだろう。 それは有り得ないことだというのにー。 甘えるのも求めるのも、むしろ望んでいるというのにー。 「けど、やっぱり我慢するのが難しくて、そうしたらリボーンが…」 「…なるほどな」 リボーンのおかげで、5時間だけ、「薬のせい」にすることが出来たわけだ。 ディーノがほっと安心しているのとは裏腹に、ツナは完璧に嫌われたと思い、肩を丸めていた。 (…可愛い) ディーノがツナに軽くキスをすると、ツナは驚いたように目を丸くさせた。 あんぐりと口を開けた姿も可愛くて、ディーノはつい、顔を緩ませる。 「―…オレも不安だった」 ツナの態度から予想していた勘違い。 それはまた、後でゆっくり話すことにして。 薬を飲ませた時から丁度5時間、二人の唇は深く合わさっていた。 |
無料配布のものです。ゲロ甘すぎだ…!!<い、今頃気づかれてもナ…
小説へ戻る