ーリボーンさん、どうかしたのか。こわい。こわすぎる。

アジトでコソコソと流れる話し声。
耳にちらつき、それすらも、リボーンの勘に障るのだ。
3回、声が聞こえたら、打ってやろうと決めていた。

ーどうしたんだろうな。

1回目。

ーあのリボーンさんでも、汗、かくんだな。なんつうか、お、怒ってるよな?

2回目。

ーボスがいてくれたらなあ。

・・・3回目。

スっとしなやかに銃を向け、チャキっと彼らを標的にすると、皆、弾けたようにすっ飛んで行く。
ヤレヤレと、一息吐いたリボーンは、再び、薄い本で、己を扇いだ。

ー室内のクーラーが、全て壊れたのだ。











i ra  i ra














原因は、一人の男の仕業だった。
ジャンニーニ。あの男が、余計な真似をしたのだ。
発明だの何だのと、全てのクーラーをいじくった結果だった。
愚か過ぎる行為に、リボーンが怒らないはずもなく、強烈な脅しをかけ、全室のクーラーを直すように、命じた。
この広いアジト。全て直すのだ。時間がかかる。

(あのアホ・・・)

リボーンは、「暑い」と感じることが、非常に嫌いであった。
しかし、今日という日は、身に着けているシャツすら、脱ぎ捨てようかと思うほどの暑さだ。
よりによって、こんな時に、ジャンニーニのアホ男は、何という真似をしてくれるのだろうか、と、心底呆れ返り、苛々していた。
一つ、二つ、三つ・・・いくつかボタンを外し、ドッカリと座る。

『ーボスが、いてくれたらなあ』

ふと、言われた言葉を思い出す。
ツナがいたら。ツナがいたらどうだったというのか。
ツナがいたら、壊れたクーラーが直ったというのだろうか。
それとも、苛々しているこの自分を宥められただろうに、とでも言いたいのだろうか。

(・・・は・・・、)

なんだそれは。自分で笑ってしまう。

ツナは、商談でアジトを離れていた。もう一週間も前からだ。
3日でケリが着くだろうと言われた商談が、長引いている。
夜になればすぐに眠るものだから、電話というのも、あまりない。
いらいら、いらいら。
珍しく、イライラとしている原因は、果たして、この暑さのせいなのか、それとも、

ー彼に会っていないからなのか。

なんて、そんな幼稚すぎる理由は、決して自分には当てはまらない。
リボーンは、そう決めてかかっていた。
いかなる時も、心を動かさない男でいろと、ツナに教えたのは自分だ。
何もかも、教え込んだのは、自分のはずだ。
けれど、彼と一緒に、時を過ごす毎に、矛盾ばかりが生まれてくるようでならない。

心を動かさない男で、いられていない。今、自分は、きっと、そうだ。
そうして、自分に対してーそれのみ、心を動かしてほしいと、思ってー

「・・・ねーだろそれは」

いやそれは断じてない、と、自分で否定しては、口許に手をやっていた。
難しい顔をしているリボーンに、ビクビクと部下が近づいて来る。
そうっと、一歩一歩、近づいてくる。
これでも、他の相手には堂々とした男だ。
しかし、リボーンはあまりに別格すぎる為、皆、誰しもが、一声掛けるのすら、難しかったのだ。

「で、電話です」
「誰だ」
「ボスからですが・・・」

その名を聞いた途端、心に余裕が生まれるのは、情けないが、本当の話で。
部下に緊張しながら渡された受話器を受け取り、耳に当てる。
この電話の向こうに、ツナが居るかと思うと、物凄く近くにいるような気がしてくる。
などと、甘っちょろいことを考える自分を笑ってやりたくなるが、これも本当のことなのだから仕方がない。

『ああ、リボーン?クーラー壊れたんだって?大変だね』
「ああ。ジャンニーニのアホが、やらかした」
『ええ、ジャンニーニがやったの?リボーン、暑いの嫌いなのになあ』

受話器の向こうで、笑っているツナの顔が浮かぶ。
彼が涼しい風を運んできているわけでもないのに、イライラはピタリと治まってしまうから、不思議なものだ。
不思議だった。
ツナは、最初から不思議だった。
てんで弱い男が、会う度会う度、部下を増やしていく。
彼の強さからではない。皆、その中身に、魅せられているのだ。

ーそして自分も、例外ではないのではないだろうか。

『で、リボーンが大変だから、早く帰って来てくださいって、何回も言われたんだけど、何かあった?』
「・・・・・・あ?」

治まったはずのイライラは、再び。
10分後、銃声の音がアジト中に響き渡ったのは、勿論、遠く離れたツナには、聞こえない。












びっみょうな…汗汗
鴉さんに捧げます><
というかスイマセン…本当に…何だかもう本当に微妙なブツになってしまったような。。。
本気の恋の前ではリボーンも一人の男かなって思…ネ…!
鴉さん、素敵なイラストありがとうございました…!お礼になっていないかもですが、貰ってやってくださいませ〜!





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