彼が隣で眠ってくれた時の感動といったらなかった。
柔らかそうな髪は前々から気に入っていたし、けれど怯えた表情も気に入っていた。
一、ニ、三、四……、肩に寄りかかっていた頭は、次第にズルリとずれていく。
あっという間に膝の上。
頭の感触が、髪の感触が、温かさが、膝から伝わっていく。
自分の体温だけが、異常に冷たいのではないかと、少しギクリとした瞬間でもあった。








「疲れていたんですね」

眠っていることに気がついたツナは、すぐに慌てて飛び起きた。
骸の顔を見つけて、サアっと顔を青くして、肩を上げてパクパクと口を開けた。
殺されるとでも思っているのだろうか。骸は軽く首を傾げる。

「すいません…っお、オレ、いつの間にか寝てた…」
「どうして」
「え?」
「どうして謝るんですか?」

ツナは黙ってしまった。
癖の付いた髪を撫でると、また少し、体が揺れたのが分かった。
骸にしてみれば、不思議でならない。
キスもしてセックスもして、一通りのことをしても尚、ツナの態度は変わらない。
恐がっている彼も確かに情欲をそそられるが、安心しきっている素顔も欲してしまうのだ。
ことツナに関しては貪欲な心がありすぎるのがいけない。

ー骸さん、おっかねー。

何の話をしていた時だったか、犬に言われたことがあった。
笑いながら、軽く言われたことがあった。
ツナは『六道 骸』は恐ろしいと刷り込まれている。
骸をまだ、目にしていない時から、骸ーというより、黒曜中は恐ろしいと頭に入っているのだと思う。
それが完璧に拭えず、今に至るのだーと骸は考えていた。
あの、森で出会った時は驚いた。あまりにも小さな少年。
何の力も無さそうな少年。空からの光が、彼の髪をチカチカと輝かせていた。

その後見せた、怯えた顔が骸の胸を高鳴らせた。

支配してやりたいと、ほんの少し思ったのだ。
それが段々膨れ上がって、本当に自分のものにしてしまった。

『好きだとか、そういう言葉はどうでも良かった。』
それは最初の内だけ。
段々、段々と欲しくなってきたのだ。欲求は段々と増えていく。
それは、沢田綱吉という人間を知っていくからであった。
全て、無理矢理に言わせ、無理矢理奪った。
そうでもしないと、何も手に入らないのだろうから。

それでも、ツナには優しくしているつもりー。


「骸さん、あの、学校いいんですか…オレ、そろそろ授業戻らないと…」
「構いません」

目を細められて言われた言葉。ツナは動けなくなってしまった。
骸さんは構わなくても、オレは構うんだよーっ!と、ツナは心の中で叫んだ。
一時間目からずっと、この調子なのだ。
しかし、骸の命令は絶対なのだ。命令ー本人はそうは思ってはいないに違いないが、
彼がいかに優しく微笑んでいても、ツナの拒否を絶対に許さない空気が、そこにはあった。

「−…勉強嫌いな君が、どうして教室に戻りたいんですか?」
「そー、それはだって、」
「僕の側を離れたい。これは許されない。それとも、教室に会いたい誰かが居る。これも許されない」

一つ、二つー、と、指折り数えられる、「教室に戻る理由」
ぞっと、ツナの背筋に冷たいものが走った。
本当に、骸は瞳だけで人が殺せるのではないだろうかと思う時があるのだ。
恐ろしい。どのくらいの力を秘めているのだろう。
側に居られない。逃げろ、と、本能が告げている。
ツナは思わず立ち上がり、骸から離れようと顔を背けた。

「−…酷いですね。逃げようとするなんて…。僕は綱吉君のこと、こんなに可愛がっているのに」

ツナの手首は、氷の手に掴まれた。ヒヤっと全身が氷に射抜かれたような、そんな感覚であった。
捕まればもう、抵抗することなど出来ない。
身動きが取れなくなって、小刻みに震えるだけだ。

(ああ、寒いのか。…かわいそうに)

自分があまりにも冷たい温度だからなのか、恐怖からなのか、どれほど愛撫してみても、震えは止まらない。
夜になれば黒の中にぽっかりと白い吐息が浮かび上がるくらいに寒くなった。
それに加えこの体温なのだから仕方ない。この、体温ー。
やはり人より冷たい。しかし、それでもいいと骸は考えていた。
彼がいつだって、温めてくれるのだから。

温かな体を抱きながら、言葉をねだる。
彼が逆らえないのは、承知の上で。
ツナが温もりを与えなくなった時こそ、その時こそ凍ってしまいそうな体だが、
そんなことは有り得ない。自分が絶対に「許さない」ことなのだから。
そして彼は絶対に、逆らえないのだから。








ツナは骸さんに恐怖している…。
二人はそれはそれは色々なことが、あったのだから…!<なんなのYo−!(主に骸様の無理矢理プレイなどが)





戻る