そうして、お互いの家に着いた。
左から、アキラ君の家。私の家。そうしてその隣が、加賀の家。
3人揃って、とても近いのだ。
小さい頃はよく遊んだけど、今では3人揃って遊ぶなんてことは、もう無くなったけど。
「じゃあ、またね!また遊びに行っていい?」
私が言うと、アキラ君は優しく笑った。
アキラ君て、とっても綺麗に笑う。
笑わなくても綺麗な人だけど、笑わないと冷たい印象を感じる。
「勿論。さんの家にも遊びに行かせて」
「ん。狭いけどね。相変わらず」
私の家の狭さなんて、アキラ君は小さい頃から知っているだろうけど…
てへへと頭を掻くと、アキラ君はまた、口元を緩めた。
あ、この顔好きだなぁ。
昔は「アキラ君の笑った顔、好き」とか、良く言ってた。
もうそんなこと、言えないけど。
だってやっぱり、恥ずかしい。
「…さん、最近学校でお弁当売ってるんだって?」
…え?なんで知ってるんだろう。
私、言ったっけ。
ううん、言ってない。
あれ?そうだ、言ってないよね。
お母さんが言ったのかな。
…?
「あれ?私、言ったっけ?」
「ううん、加賀君から聞いた」
か、加賀ー…!!あいつか…。
アキラ君、変に思うだろうな…。いや、優しいアキラ君のことだ。
同情してくれているかもしれない…。
あんな狭い家に住んでるんだから、きっと苦しいよね…さん、内職までしてるんだね…みたいな…。
わー…それ虚しいなー…
できるなら、アキラ君には知られたくなかった…。
か、加賀のやつ、よくも喋ってくれた…!
「…け、結構売れてるんだけど、ね」
あははと笑い飛ばすと、アキラ君は何でもないように、にっこりと頷いた。
ああ、アキラ君の頭から、私が弁当を売っているという情報を、抹消したい…!!
そういう思いで一杯になった。
「僕もさんと同じ学校だったら買うのに」
「ほ、ほんと?嬉しいな〜!毎度ありー!なんちゃっ」
「さんが、作ったものだしね」
なんちゃって。
と、全部言い切れなかった私の代わりに、アキラ君がその後、「なんて、ね」と付け足した。
なんて、ね。
その後、二人で笑い合った。
笑い合ったけど、私の心はバクバクいっていた。
だって、私が作ったもの、買ってくれるとか。言ってくれてたのだ。
凄い言葉。
これを、もっと早い段階で聞いてたら、きっと私は有頂天になって告白していたに違いない。
今は、もうーしないけど。
好き…は好きだけど、どちらかというと、憧れというものに近いのかもしれない。
「じゃあ今度こそ、またね」
私が言うと、アキラ君は軽く会釈して、ガラガラと、門の中に入っていった。
完璧に閉まるまで、私は手を振る。
もうアキラ君の姿は見えない。さあ、私も帰ろう。
そう思って、くるりと振り返ると、そこには加賀が居た。
びくっと肩を震わせ、つい叫んでしまった。
「か、加賀ー!」
煙草の煙を吐き出すと、よ、と片手を挙げる。
よ、じゃないっての…。
「…いつから居たの?」
「ちょっと前から。」
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