『誕生日には






好きな事







いっぱいしてあげる』






それは、私が以前アキラ君に約束してしまったコト。
軽はずみに言ったはずの言葉。
冗談まじりに言った言葉。


だけど、アキラ君は全く忘れている様子もなく、本気にしている様子だった。







「今日は…泊まっていける?」



「うん!大丈夫だよ」



今、私は両親不在のアキラ君の家に来ている。
何といっても、今日はアキラ君の誕生日なのだ!

ケーキとかも買ってきたし!
プレゼントは後で一緒に買いにいこうと思ってる。

だって、私が一人で買ったりしたら絶対失敗するもん・・・


アキラ君は私と全く趣味が違う。
頭もいいし、ゲームとかテレビとかも、あんまり興味ないみたいで。

私、テレビもゲームも好きだけど、勉強はあんまりしないし。

アキラ君、大人っぽいし、私もちょっとでも近づけたらなぁ・・・



「…覚えてるよね、約束」


「うん!!あのね、私、考えてきたんだ!アキラ君の好きなこと」


鞄の中をゴソゴソと漁って、マグネット碁盤を出した。


「じゃーん!!アキラ君、碁が好きなんだよね!!」


「…え・・・まぁ、そうだけど・・・」


「私、頑張って勉強してきちゃったよー。アキラ君には全然敵わないと思うけど、一応覚えてきたからっ」


好きなことって、コレだよね!
・・・でもアキラ君、何か微妙な顔してるなぁ…
ち、違ったのかな・・・


私がシュンとしていると、アキラ君がクスっと笑って、マグネット碁盤を広げてくれた。


「・・・やろうか」


「…これであってた?」


好きなコト、と言うと、アキラ君は苦笑する。
・・・やっぱり違ったのかな?
でも、私も覚たての碁をアキラ君に見てもらいたいし・・・いいかな。


「うん!お願いしますっ」




ワクワクしていると、後ろからゴホン、と言う咳払いが聞こえてきた。





「…アキラ君」


お、緒方先生!?
何でここにいるの?

緒方先生は良くアキラ君の家に来ていたから、私とも何度か面識があった。
・・・というのも、実は、私に碁を教えてくれたのも緒方先生なんだ。


「緒方さん!?…何で…」


アキラ君が声を荒げると、緒方先生はボソボソと話し始めた。


「いや…鍵が開いていたからつい‥それに名人に留守の間、君の事を頼まれているしな…」

「…‥‥‥」


私達は茫然として緒方先生を見つめた。



あ、そっかー!
緒方先生も、アキラ君の誕生日、お祝いしに来てくれたんだ!

私がニコニコとしていると、緒方先生が近寄ってきた。


「・・・アキラ君と打ったか?」


「これから打つんです。緒方先生の名前、汚さないように頑張りまーす」


グっと拳を握ったところを見せると、緒方先生はフっと笑った。


でも、アキラ君は何だか機嫌が悪そうな表情をしている。
・・・?
さっきまでは笑ってくれてたのに。

どうしたんだろう・・・










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