もっと



もっともっと君を




夢中にさせたい。











「ん…っちょ…っと待っ…」

俺が愛撫すると、さんの口から甘い声が漏れる。
久しぶりの、甘い声。


「ま…」


待った、と言われてももう止められない。
でも、そんな俺の態度にとうとうさんがキレた。


「今日は無理!!」


強い力で突き放される。
次の瞬間、俺もキレた。


「…何でだよ!最近全然してねぇのに!」


そう。
最近、さんは俺に触れさせてくれない。
前はそんな事無かったのに、最近では拒まれてばかりで…。

何か理由があるのか?

嫌いになったとか、そんな事言われたらどうしようと、俺は内心ヒヤヒヤしていた。


「…だから……それは…」


モゴモゴとして中々答えないさんに焦れて、もう一度唇を奪う。


「んん…っ!…も…っ…ダメ…!!」


あんまり拒んでくるから、やっと唇を離した。
はぁ、と溜め息を吐いてさんの方を見ると、凄く困った顔をしていてズキっときた。
お、俺にこういう事されたから、そんな顔してんの・・・?
さん…


「何でだよ…?」



「…そ、そういう気分じゃ、ない」


最近のお決まりのセリフにお決まりのパターン。
俺が求めて、さんが拒んで、理由を聞けば「気分じゃない」

納得いかない。

「なぁ、さ…」


「ご、ごめん!もう帰る!!」



理由を聞こうとすると、さんは勢いよく俺の部屋から出て行ってしまった。


「…何なんだよ…」


さんに逃亡を食らった俺は、逃げられた原因をアレコレ考えながら、部屋で一人、落ち込んでいた。







「暗いわね〜…。またちゃんとケンカでもしたの?」





さんに逃げられた直後、家に訪ねて来たのは奈瀬だった。
既に俺達の関係を知っている奈瀬は、俺の気持ちを一番に左右させるのはさんだということを分かっていた。


「…本当に俺の事好きなのかな…」



「…ああ、なんか和谷ってちゃんの恋人っていうか…弟って感じだもんね」


奈瀬の言葉が、胸にグサっと刺さった。



お、弟…
反論できねぇ…



本当にそんな風に思われていたら、堪ったものではない。
そんな関係では満足が出来ない。

沈んでいる俺を、奈瀬は横目でチラっと見ると、また口を開いた。


「…ちゃんをもっと夢中にさせたい?」


「…そりゃ…当たり前、だろ」


させられるものなら、させたいに決まってんだろ?



「でしょ?だったらこれから…少し私と仲良くしない?」


「はぁ?俺達普通に仲いいじゃん」


「違うわよ!もっと私とイチャつけってこと!!そしたらちゃんもヤキモチ妬いたりして、和谷だってオレってこんなにさんを夢中にさせてんだなーって思えるじゃない」


「…お前…それ…妬いてくんなかったら逆に悲しくねー?」



はっきり言って、自信ない。
さんはヤキモチとか、あんまり妬かない気がする…。
でもそんな俺の気持ちとは正反対に、奈瀬は任せて!と拳で胸を打つ。





「うまくやるから大丈夫よ!ちょっとはカケヒキ、してみなさいよ!」


あまり乗り気じゃなかったけど、奈瀬と話していく内に、俺は段々とその気になり、最終的には了解を出してしまった。









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