もう少しで 2月14日。
TVからはチョコレート製品のCMが頻繁に流れはじめ、外に出れば至る所で『バレンタインフェア』なる場所が設けられている。



「もうバレンタインかー」


手合いの帰り道、ポツリとがそんな言葉を漏らす。
ドキっとした。
でもそんな様子は見せないで、俺はをいつものようにからかった。



「お前、バレンタイン知ってたんだな」


言うと、はプクっと頬を膨らませる。



「し、知ってるよ!!当たり前でしょ!!」


「や、お前疎そうだから」


俺が茶化して、が怒る。
こういう関係もそれはそれで楽しい。


だけど、それとは別の関係になりたいという想いが、日に日に強まってー



正直、つらいんだよなー…


表情には微塵も出さないが、心の中で一人暗くなる。








俺達ってどうなんだろう…。恋人じゃねーけど、普通の友達でもない気がする…



それとも、自惚れてるだけなのだろうか。
少なくとも、自分は違う。
を普通の友達として見られるのなら苦労はしない。
そうなってくれたらどんなにいいだろう、と思ってしまう程に、が好きだった。


が俺の事、そういう意味で好きじゃないんだったら、こんな感情捨てたい…


そんな事を思っている俺の顔の前を、は手をブンブンと振る。
ああ、コイツ、本当に何も分かってないんだろうな…



「和谷!!」


ハっと我に返り、笑顔を作る。


「…悪い。なに?」


「和谷だったら何が欲しい?」


ボーっとしていた所為で、が何の事を言っているのかわからない。



「?何が」

「バレンタイン」






『バレンタイン』






の言葉が、頭の中で響く。
自分に聞いているのだろうか、と、思わず周りを見回すが勿論そこには自分しかいない。



…俺に聞いてんだよな?


ドクン、ドクン、と、胸はうるさく鳴り響く。
それはもう、ヒカルに聞かれてしまうんじゃないだろうかと思う程に。




「それって・・・」


「だから、和谷だったら何貰ったら喜ぶ?」


一気に自分の顔が赤くなるのを感じた。







マジで…?




ーーーが何かくれるって思っていいのか…?




胸が更に異常な速さで鳴り出す。



「べ、別に…好きな奴からなら…何でも…」


「それじゃ駄目なんだってば!!何が欲しい?」


は俺の服の裾をギュっと掴み、上目遣いで困ったように顔を覗き込んでくる。



可愛い。
あんまりそういう顔は、しないで欲しい…。


慌てて目を逸らして、何とかを視界に入れないようにする。











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