「何貰ったら、和谷、喜ぶ?」
その問いに、1人の人物がパッと頭の中に現れる。
『』
貰えたら。どんなにいいだろうと思う。
が、
…ありえないよな。
恋愛に関しては疎いだ。
しかも自分達はまだ恋人同士にもなっていないというのに。
馬鹿かオレは…
答えない俺に焦れて、は服を更に強く引っ張ってくる。
あーもー俺はから貰えればなんだっていいっつーの…
なんて、言えない。
「−何でそんな事聞くんだよ…?」
ー俺が、好きだから?
どうか自分が望んでいる答えが返ってきますように、と祈るような気持ちで聞いてみる。
が、
「あかりちゃんが、バレンタイン何貰ったら男の子って喜ぶのかなーって。相談されたの。だから参考に和谷の意見聞こうと思って」
絶望的な気分になってくる。
「…あっそ…」
そりゃ、そんなうまくいかねーよな…
何とか自分を慰めようとしても、全く効果がない。
俺が絶望でいっぱいになってるなんて全く知らないだろうは、きょとんとしている。
つーか、気づけよ…
段々腹が立ってきた。
それらしい言葉は、昔何回か言ったはずなのに。
…なんでここまで気づかないんだ…?
はーっと溜め息を吐くと、は何を勘違いしたのか、気の毒そうに聞いてきた。
「和谷は誰か貰えるアテあんの?」
「あーまぁな…」
もう何もかもどうでも良くなっている俺は、無気力に答えた。
「ほんとに?」
「…あのなー…そんなに俺がモテなく見えるか?」
これでも毎年、そこそこの数は貰っている。
が、これでにモテなさそうとか言われたらもうお終いだ…。
「ううん、モテそう…」
ぽしょ、と呟くの姿が、妙にしょんぼりしているように見える。
どうしたんだ?と口を開こうとしたその時。
「貰えるアテなさそうだったら私が何かあげようと思ってたのに」
が、爆弾発言をした。
「…え?」
「でも和谷いっぱい貰いそうだもんねー」
「違…っ」
一つも貰えないって言えば、から貰えたのかよ!?
ーそう言っておけば良かった…!!
「アテなんかねーよ!な、無くなった!」
多少無理やりでも、気にしてはいられない。
せっかくから貰えるかもしれないのに、言わないとまた後悔するハメになる。
「…?そうなの?まあいいや!じゃあ何かあげるね!」
楽しみにしてて!と、はにこーっと笑う。
さっきの絶望感はもう吹き飛んでしまった。
の言葉一つで振り回される日々。
でも結構自分は幸せなのかも、と、俺はそんな事を思っていた。
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