『ねぇ、また断るの?』


最近毎日、お決まりの時間から、お決まりの内容で母さんから電話が掛かってくる。
夜の9時を回ると、母さんからの電話。


内容はー


『先方は結構気に入ってくれてるみたいなのよ?条件だって悪くないしー…』


お見合い。


まだ23だ。
結婚なんて考えたくない。
なのに、母は何故か最近、しつこく私に結婚しろと迫ってくる。




まだ23。
でもたとえ30になろうと、40になろうと、結婚はしない。


恋愛もしない。


絶対に。



ごめんね、お母さん。


そう心の中で呟く。




『困ったわね…』



「…きるよ?」



そう言うと、私は手早く電話を切った。



困らないよ。


私は



私は、一人でいいんだから。











OLの私は、次の日いつものようにパソコンに向かっていた。

ああ、眠い…。

昨日はついつい、テレビでやっていた映画を見てしまった。
前後編になっていて、昨日は前編。今日は後編。

ビデオを持っているからいつでも見れるはずなのに、何故か見てしまったのだ。

しかも前編を見てしまったら後編も見たくなって、ビデオラックをひっくり返して、その映画の後編も結局見てしまった。


…我慢して寝れば良かった…。


そんな事を考えていると、友達の茜がやってきた。


!お昼行こう」


彼女、柏原 茜は入社して初めてできた友達だった。
気が合って、すぐに打ち解けられた。
彼女に出会えたのはとても幸運な事だと思う。






、またお母さんから電話掛かってきたの?」



「うん…。参ったよ…」


パスタを口に含みながら昨日の電話の事を話していると、茜がワカラナイ、と言った顔をする。


「でも、条件良いんでしょ?何で、いっつも断っちゃうの?この際寿退社しちゃえば〜?」


アハハ、と冗談交じりに言うから、私もつられて笑ってしまう。




寿退社かぁ…

え、縁が無さそうだ…



「うーん…だってホラ、まだ結婚とかしたくないと思わない?」


「うーん、まぁね…。でも私は結構…」


そこまで言って、茜は口を噤んだ。
だから私は、彼氏と上手くいってるんだな、って思った。


「ま、ガンバレ!!」


バシバシと肩を叩かれて、ちょっと元気が出た。

…茜が寿退社しちゃったら、寂しくなるな…。


なんて思った。









適当にレロルト食品を買って、マンションに帰ると、ドアの前に母と見慣れない男が立っていた。



「母さん!?何やってんの!?」



!待ってたのよ。こちら、冴木光ニさん」



母が私に紹介したその男は、私に軽く頭を下げる。
かなり二枚目だが、笑い方がプレイボーイっぽい。



な、何…?



何故紹介されたのかちょっと疑問に思ったけど、またいつもの如く、お見合い相手を紹介されたんだとすぐ分かった。
だから、ちょっとお話して断れば何とかなるだろうと思っていた。


お気楽に考えていたから、冴木さんにも軽く微笑み返した。


でも。



「光ニさん。今日から2週間くらい貴方と一緒に住んでもらうから」




「……は?」












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