「大佐が好きだなんて、言った覚えねーよ!!」
「君は・・・何でそう素直じゃないんだね」
「素直な事言ってんだろ!!」
「言っていない!私が好きだと、一週間前、確かに君の口から聞いた」
そう。ロイの言う通り、二人は一週間前、両思いになったーハズだった。
しかし、あまりに会う時間が少ないエドにロイが意見したところから、言い合いが始まってしまった。
エドは意地になって、『大佐を好きだなんて言っていない』と、そう言い張った。
しかし、ロイも負けてはいない。
「言った!!」
「言ってない!!」
「馬鹿を言うな!!絶対に言った」
…キリがないやりとりが続く。
「しつけーな!これからは好きだなんて言わねぇよ!」
エドの言葉がロイの胸にグサっと刺さる。
エドのその言葉は以前『好き』と言った事を肯定しているものだが、今度はこれから言わないと言い出した。
意地を張っているだけ、と、わかってはいてもやはり悲しい。
「…ならもう一度、好きと言わせてみせる。」
その時、エドは何か思いついたらしく、ロイの方を見てニヤっと笑った。
「じゃあさ、ゲームやろうぜ」
「…ゲーム?」
「俺は大佐に、大佐は俺を好きって言わせるゲーム」
「…また馬鹿なことを…」
ヤレヤレと額に手を当てる。
全くノリ気でないロイに、エドははーっと息を吐き出す。
「…たまにはいいだろ。こういうのも。」
「…一体何を企んでるんだ?」
エドが何かを企んでいるのは、やはりロイもお見通しだったらしく。
「…本。どうしても欲しいのがあるんだ。アルが読みたいって。買ってこいって言っても、何か変に遠慮するんだ、あいつ。大佐からプレゼントって事なら、きっとアルも受け取るから。」
本当に、この少年は弟に甘い。
弟の望みなら、何でも叶えてやるんではないだろうか。
自分と量りにかけるなんて子供じみた事は思いたくないが、それでもやはり、気にしてしまう。
「…いいだろう」
「了解。期限は今日含めて5日間。その間好きって言った方が負け。後とか先とか関係なしで、とにかく言ったら負けな」
OK?とロイの顔を窺うエドに、了解を出した。
しかし、肝心のエドの罰ゲームについて何も決めていなかった事に気づく。
高価な物も、欲しい物も、特別に見当たらないが、やはりエドには、自分への愛を示して欲しい。
「そうだな。では私が勝ったら…」
ごにょごにょと、と耳元で囁くと、エドの顔はみるみる内に赤くなった。
「…うわ。大佐、最悪」
ロイが微笑んでみせると、エドは上目遣いに睨んでくる。
流石、女をたらしこんでいるだけあると、変に感心してしまった。
不意に時計を見ると、もう5時近くになっていた。
エドは急に慌てだす。
「アルと5時に待ち合わせてんだった!」
扉の方へ向かい部屋を出ようとするが、突然何か思い出したように振り返ると、その腕をロイの首に回した。
「ん…」
エドは唐突に、ロイに触れるだけのキスをした。
「は、鋼の・・・?」
突然のキスに混乱しているロイに、エドは不敵に笑った。
「鋼…」
呼びかけたロイの声など聞かずに、エドはさっさと部屋から出て行ってしまった。
ロイは熱い額に手をやり、前髪を握る。
「…もう負けそうだ…」
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