返事をすると、加賀は軽く舌打ちをして、奈美ちゃんからお弁当を貰っていた。
もっと嬉しそうにすればいいのに。
素直じゃないなぁ…。
加賀にお弁当を貰ってよほど嬉しかったらしい奈美ちゃんは、私にも一礼して、パタパタと駆けて行った。
ふふ、可愛いなぁ…。
後輩を見ていると、私も、一年前はあんな感じだったかな。
なんて思ってしまう。
…いや、あんな可愛くなかったか…。
「良かったね。加賀」
「・・・おまえなぁ」
「ん?」
「・・・何でもねぇよ」
何か言いたそうだったのに、加賀はくるりと背を向けて、歩き出してしまった。
あいつは本当に、いっつも良くわからない奴だ。
まぁ。いい奴、なんだけどね。
****
「っ!!起きろよっ」
あれ?
何・・・?
今、何時・・・?
ぼんやり目を開けると、霞んだ世界が広がった。
眩しい…。
ゴシゴシと目を擦っていると、ポンと軽く頭を叩かれた。
「義高・・・」
「6限、ずっと寝てたんだろ」
からかうように、デコピンされる。
クラスメイトの和谷義高とは、高校で仲良くなった。
中学も義高と一緒だったら、もっと楽しかっただろうな、なんて思わせてしまうほど、良い友人だ。
「…義高、何でいるの?」
「…いちゃ悪いかよ」
私の言葉に、義高は少し拗ねたようだった。
こういうとこ、可愛い。
・・・なんて、同年代だけど。
「ううん、そうじゃなくて。今日、朝いなかったよね?」
「ああ。寝坊したから、さっき来たばっか」
そうですか・・・。
「あ、そうそう。義高、今日ヒマ?」
「へっ?」
聞かれた義高の頬が、少し赤くなった。
あらら、可愛い。
「ほら、テストの結果。私が負けたから、罰として義高に奢るってやつ。今日とか、どう?」
そう。
この間、数学の小テストで、義高と勝負をした。
負けた方は相手の好きな物を奢る、という罰ゲーム付きで。
5点差で。
数学に弱い私は、負けてしまった。
「があんなに数学に弱いとは思わなかったぜ」
「義高になら勝てると思ったんだけどね」
そう言うと、どういう意味だ、と義高にツッコミを入れられる。
あ、でも。
思い出した。
「義高、今日って部活の日だよね。囲碁部」
「あー…そうだった。でも今日ならすぐ終わると思う」
「だめだめ。部活終わっても、”囲碁教えてください〜”って女の子、よく来るじゃん。義高借りたら恨まれそう」
「・・・そんなの、俺が断れば問題ないだろ」
「ダメ!今度にしよ?」
ね?と首を傾げると、義高は納得してくれた。
私の周りって、囲碁とかそういう感じの物をやる人、多い感じがする。
加賀も将棋部だし。
義高は囲碁部。
それに。
アキラ君も。
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