チャイムが鳴ると同時に、明日美ちゃんの机に向かった。
いつも一緒に帰っている、大の仲良し。
奈瀬 明日美ちゃん。

ハキハキしていて、一緒にいてとっても面白いんだ。
凄く可愛いのに、男の子にもモテるのに。
どうして彼氏とか作らないんだろうって思って、一回聞いた事がある。
そうしたら、「それはの方だよ」って返された。

・・・?

意味が良くわからず、そこは流してもう一回聞いてみると、その答えは。
「囲碁だけで精一杯!」というものだった。
うーん、なるほど。
そこまで夢中になれるものがあって、私はとってもカッコイイって思うけど。


〜!!ごめん!今日一緒に帰れないっ」

私が来ると同時に、明日美ちゃんは眉を寄せて嘆いた。
そして、机からとりだす一枚の用紙。
あ、これ…

「この間の数学のミニテスト?」

「そう!も〜最悪!35点以下は補習だって!標準高すぎると思わない?」

因みに、50点満点だ。
私は義高との数学対決があったから、珍しく数学を勉強をしていた。
その時にちょうど、ミニテストが行われたものだから。
だから、点数には問題なかったのだ。
義高に感謝しなくちゃなぁ。

は?どうだった?何点?」

「49点。へへ!珍しく良かったよ」

すると明日美ちゃんは、えーっ!と大声を上げた。

「すごいじゃない!ってやっぱり頭いいんだ?」

いや、それは違うよ!明日美ちゃん!
笑って明日美ちゃんの言葉を否定すると、明日美ちゃんは首を傾げた。

「何?じゃあ今回はなんでそんなにいい点取れたわけ?」

「義高と点数対決してたんだよ。数学のテスト。その時に、加賀に数学教えてもらってたから。そうじゃなきゃ私も補習だったよ」

すると明日美ちゃんは、アングリと口を開けた。
その後、何回か首を縦に振りだした。

「豪華な面子!女子に恨まれてもしらないわよ!その内くるわよ〜カミソリレターが!」

なんてね、とペロっと舌を出す明日美ちゃんは、やっぱりとても可愛い。
その内にガラっと音がして、先生が入ってきた。
どうやらそろそろ、教室を出ないといけないみたいだ。

明日美ちゃんに頑張って、と一言告げると、教室を出た。











***







正門に向かってテクテク歩く。
丁度、門を出た所で。

さん」

声をかけられて横を見ると、そこには女の私も羨む様な、綺麗な黒髪を肩までおろしている少年がいた。

「アキラ君!どうしたの?」

アキラ君とは、家が隣同士だ。
お父さんが囲碁で有名な人で、アキラ君も有名だから、凄く大きな家に住んでいるの納得できる。

純和風って感じで、憧れるんだよね。アキラ君の家って。

うちの母だって、いっつも言っていた。
アキラ君の家みたいな所に住みたいって。

それに、時々変な事を言ってくる。

、アキラ君と仲が良いんでしょ?アキラ君のお嫁さんになれば、将来安泰じゃない!玉の輿よ』

と、アキラ君に失礼な事を、母は言ってのけた。
本当に、それは有り得ないと思った。
アキラ君だったら、もっと良い人をもらえると思う。

「近くで取材があったから。さんも、そろそろ学校終わるかと思って」

「そっか。仕事、大変だね」

そう言うと、アキラ君は微笑んだ。
高校を行かないで、碁のプロとしての人生を決めたアキラ君。
小さい頃から、碁中心に生きていた事を、私は知っている。
だから、それが当たり前なのかもしれないって、思うんだけど。

普通の高校とか、行きたくなかったのかな、とか。

とにかく、もう社会に出て、夢中なものを持っているアキラ君が、羨ましく思えたり。
かっこいいな、と思ったり。
何だか、ちょっと。
ちょっとだけだけど、自分が惨めに感じたり。するんだよね…。

さん?どうしたの?」

いつもより全然喋らない私を心配してくれたのか。アキラ君が顔を覗き込んできた。













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