[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。


























俺の位置からでも、「和谷」の怒ったような声が携帯から聞こえる。


「ごめん!必ず行くから!」


それだけ言うと、由美は携帯を切り、俺の方を向く。


「もう一局、お願いします」

人差し指を立てると、上目遣いに俺を見る。
ドクン、と胸が高鳴ったのが分かった。


俺が目を丸くして由美を見ていると、由美は首を傾げる。


「…?あー…緒方先生…何か…用事あった?」
「…いや‥無いが…。…行かなくていいのか…?」


「…もうちょっと」


言いながらマフラ-を外し、コートを脱ぐ由美に、自分の気持ちを見透かされたような気持ちになった。




『行ってほしくない』



確かに自分は感じた。それも強く。

ーどっちが子供かわからないな…

こんな感情が自分にあったのか、と驚いてしまう。
微笑をもらし、由美の方を向くと、由美は既に碁盤の前で待ち構えていた。



「緒方先生、早く打とう」



由美は笑って碁を打つ手つきをにしてみせる。


「…ああ」

俺も碁盤を前にして座り込む。

そうして、自分の中である感情が強まっていくのを感じる。



行ってほしくない



もっと   近くに



俺だけの方を




何とか 




  手に入れたい-…












NEXT→

←BACK

小説へ戻る