ピロロロロロロロ…
またさんと会っている最中にメールの着信音が鳴る。
相手は見なくてもわかっていた。
奈瀬か……
デートの中断はもう何回目だろうか。
携帯を開こうとするが、俺の片手にさんが触れた。
「…メール、明日美ちゃん…?」
寂しそうに呟くその声に、俺は一気に心臓が煩くなるのを感じた。
さんは俯いて、目線を落とす。
え…?…もしかして…妬いてくれてんのかな…
カケヒキの効果を期待する。
さんを抱きしめたい衝動に駆られるが、何とかその気持ちを抑え込む。
「あ…ああ…ごめん…大事な用がある…みたいで…」
ゴメン、と口にすると、さんは不安げな目で俺を見上げる。
「…そ…っか…」
さんが真っ赤になりながら、俺の服の裾をギュっと握る。
口では気にしない風に装っているのに、正直な行動。
「…、さん…」
我慢が出来ず、ついに唇を奪う。
さんと唇を合わせれば、もう奈瀬の所へ行く事などできないのは、わかっていた。
「ん…っ…ぅ…ん…」
段々激しくなる口付けに、さんも一生懸命応えようとする。
いつもの“待った”もかからず、さんの方も積極的に行為をしようとしている事が分かり、俺は嬉しくて仕方なかった。
しかし 暫く口づけた後、俺が唇を離すと、さんは何を誤解したのか、悲しそうな顔をする。
「…い、行かなきゃね。明日美ちゃん、待ってるんでしょう?」
さんは俺を突き放すと、無理に笑顔を見せる。
しかし長くは続かず、すぐに寂しそうな表情に戻る。
「……行かない」
さんの可愛い仕草に完全に落ちた俺は、もちろん帰る事なんて出来ず、その後、さんと存分に睦み合った。
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