モヤモヤとしたままの気持ちを抱えたまま、次の日になってしまった。 早く仲直りしたい。 そう思って、電話も早く、かけたほうがいいって思っているのに。 『和谷君には関係ないでしょ!』 さんの言葉が、ずっしりと胸に重く伸し掛かる。 ・・・痛い。 自分から電話をかける勇気なんか無い。 そう思って、携帯電話と睨めっこしていると、バイブが鳴り出し、携帯が畳の上で動いた。 「・・・っさん!!?」 もう確認している余裕もない。 さん以外からの電話なら、いらない。 もしも違うなら、切ってしまおうと思った。 『和谷…君?ごめん・・・昨日』 さんだ。 電話越しに聞こえる声は、それだけで落ち込んでいる事が分かる。 さっさと仲直りをして、前みたいに恋人同士、甘い時間を過ごしたいというのが本音だ。 だけど、どうしてもこの前の事が気になる。 ー俺には言えない伊角さんとの用事って、一体何なんだ・・・。 …やましい事じゃない、よな? そんな事を考えながら少し黙っていると、さんが不安そうに『和谷君?』と呼んでくる。 もう少し困らせてやりたいとか思ったけど。 結局、さんには勝てない。 「あー…いや、俺も。ごめん」 悪かった、と呟くと、さんは嬉しそうな声でえヘヘっと笑った。 駄目だ。 早く早く、会いたい。 「…今からさん家、行っていい?」 さんの家に着くと、少し緊張したような笑顔で、それでも精一杯、俺を迎え入れてくれた。 さんの部屋に入ると、いつも決まって、すごい部屋だな、と思ってしまう。 「さんの部屋って、二人部屋にしても平気そうだよな」 「そう?それ伊角さんにも言われたよ」 「…伊角さんも来たのか?」 俺が聞くと、さんはあからさまにマズイ、という顔になる。 何でそんな顔をするのかと、胸にモヤがかかる。 「…うん…。…わ、和谷一人くらいなら、私の部屋で住んでも平気そうだね」 何か、話題変えようとしてねーか・・・? さんのその行動が、俺の胸の中の不安に、更に拍車をかけた。 「和谷君と二人で住むのも楽しいかも!・・・ね!」 おかしい。 どこをどう見ても、さんの様子は変だ。 それに、目。 さんは、俺と目を合わせようとしない。 俺の目、何で見れないんだ? 「…じゃあ住もうぜ」 壁際に追い込む様に、さんに近寄った。 「は…?」 「一緒に」 「………え、え?」 追い詰められたさんは、俺から逃げるように壁ギリギリまで後ずさる。 「…なんで逃げんの」 「に、逃げてなんかないよ」 焦っているのか、さんは視線を落とす。 それと同時に、俺は片手を壁につき、さんを逃げられないようにした。 「逃げてないんならいいって事だよな?」 「?なにが…」 「やろうぜ」 一言で、さんの表情は固まってしまった。 |