「和谷…何だよ、お前。ちゃんに惚れたか?」
熱い視線が気になって仕方ない。
だがあまり、自分が気にしているというのを和谷に悟られたくない。
妙に見栄っ張り、というか、何というか。
変なプライドが、俺にはあるのだ。
冗談めかして和谷をからかう様に言うと、和谷の頭にクエスチョンマークが見えた。
…この分なら、大丈夫そうだ。
和谷はまだ、ちゃんに対してそんな感情を持っていなさそうだ。
だが、少し経って、和谷は焦り出した。
「な、何言ってんだよ、冴木さん!聞こえるだろ」
…はぁ?
おいおい、お前、本当に勘弁してくれ。
顔を赤くさせるな。
そういう反応をするな。
ー・・・マジか。
三角関係。
早速、こういう展開になるのか。
なんとベタな。
そう思っていると、ちゃんの視線がこっちを向いた。
こっちを見て、奈瀬とクスクス笑っている。
何だ?奈瀬、まさか変な事を吹き込んでいやしないだろうな。
何で笑っているのか、視線で訴えてみると、ちゃんはそれに気がついた。
「楽しそうですね」
そう言って、また笑った。
和谷はまた、顔を赤くさせて。俺の腕を突いた。
「冴木さん、俺、本当にそういうんじゃないから!」
「…はいはい。そういう事にしといてやるよ」
そうであって欲しい。
俺は切実にそう思う。
やっと公園から歩き出すと、ちゃんは慌てて腕時計を見る。
「わー!ごめん、明日美ちゃん!今日、お店の手伝いがあって…5時までに帰らないといけなくて。あ、これ、差し入れ。」
ハイ、と、花束とケーキの箱を渡す。
すると、奈瀬は嬉しそうな顔をしたが、すぐに表情が曇った。
「ありがとう!…でも、もう帰っちゃうの?」
「うん…。ごめんね、私が迷ったりしなければもっと話せたんだけど…」
申し訳無さそうに謝るちゃんに、奈瀬は慌てててを振り出した。
「い、いいのよ!和谷の家が変なとこにあるのがいけないんだから!」
「な、何で俺の所為なんだよ!」
二人のやり取りを見て、ちゃんはまたクスクスと笑い出した。
「冴木さんも、すいませんでした。わざわざ…」
「気にしないで。また、ラッピングよろしくね」
軽く微笑んで見せると、ちゃんも微笑んだ。
可愛い。
本当に、そう思う。
なんというか、外見の綺麗とか、可愛いとか、そういうものじゃない。
勿論、それもあるけれど、それだけではない。
内からも、ちゃんとそういうものが出せる子だ。
…今までには、俺の周りにはいなかった。
ぼうっと、俺がそんな事を考えていると、奈瀬がハっと気づいたように叫んだ。
「花束、私貰いたい!」
いいでしょ?とねだってくる。
すると和谷が、「は?」と不満の声を漏らす。
「あのなぁ、俺の部屋でやってる研究会の差し入れなんだから、俺が貰うのが筋だろ」
俺だって欲しいよ。
でもそれは、花が好きなのではなく、ちゃんが作った花束だからだ。
和谷。
お前は、何でそういう反応なんだ。
ー・・・お前がそんなに花好きだったとは知らなかったよ。
というか、本当に花好きなのか?
お前も、もしかして、そういう下心でじゃないだろうな。
どんどん邪推してしまう。
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