ピピピピピピ…
ああ、目覚まし、なってるなぁ…
でももうちょっと…。
瞼の外の世界が、もう明るいという事はぼんやりと分かっているのに。
これ以上布団の温かさに身をくるんでいたら危ないのに。
それなのに、起きられない。
・・・眠い。
しかも、寒い…。
もうちょっと…
ごそ、と布団を頭まで上げて、もう少し寝てしまおうと思った。
のだけど。
「ちゃん、朝」
ポンポンと、肩の辺りを叩かれる。
んん?
誰…?
もう、ほっといて。
眠らせて欲しい…
私が無反応でいると、今度はほっぺたをつねられた。
つねられた、というか、伸ばされた。
ちょ、ちょっと何…
寝かせてよー・・・
頬を守るように、顔を深く、布団に潜り込ます。
「6時半回ってるけど」
・・・え??
6時半…
6時半!!?
ガバっと勢い良く起き上がると、ゴチン!と頭に何かがぶつかった。
何?と思って見ると、額を押さえた冴木さんが俯いていた。
「わ!!冴木さん!?どしたの!?」
どうやら、あの『ゴチン』は冴木さんの頭だったようだ。
な、なんでそんな、頭がぶつかるくらいに密着しているんだろう・・・
私もぶつかったオデコが少しガンガンした。
でも、おかげで目が覚めた。
頭を両手で押さえていると、冴木さんが、優しく私の頭に手を置く。
ー温かい。
何でこんなに、温かいんだろう。
ぼんやりとしてしまう顔を長く見られないように、ババっとベッドから抜け出すと、洗面室に突進した。
顔を洗っている最中、冴木さんの声が響く。
「朝ごはん、できてるよ」
そういえば、何だかいい匂いがしていた。
冴木さん、作ってくれたんだ・・・
で、でも!!時間!!
時間が ナイ!!
「冴木さん、でも私、時間無いんですー!!ゴメンナサイ!!」
私も冴木さんの声に向かって、叫ぶ。
早く着替えて、会社に行かないと!!
そう思い、適当に服をチョイスして、手抜きのメイクして、髪も適当に整いて。
全てかなりの適当にやったので、少し時間に余裕が出来た。
でも、朝ごはんを食べるまでの時間は残っていない。
かなり早く出ないと、電車が無いのだ。
この時間は何故か、一本と一本の間が長くて、乗り過ごすと痛い事になる。
折角作ってくれたのに、悪いなぁ・・・
そう思いながらいい匂いのするテーブルまで行くと、それは見事に、美味しそうな「朝ごはん」が並んでいた。
湯気が立つ、白いご飯。
ちょっとした前菜に、玉子焼きに、焼き魚。
焼き魚には、ちゃんと大根おろしが添えてある。
美味しそう・・・
ゴクンと喉が鳴った。
私の様子に気づいたらしく、冴木さんはクスっと笑う。
「俺が車出しても間に合わない?」
え?
「送ってくよ。会社まで」
「い、いいんですか!?」
それなら、会社までの時間は大幅に短縮できる。
電車の為に時間が無くなっていたんだから。
「良かったー!冴木さんの朝ごはん、食べたくてしょうがなかったんです」
「・・・うん、俺も。ちゃんに食べて欲しかったから良かった・・・っ」
また。
また笑いだした…この人・・・
「・・・あの、今の全くおかしくなかったと思うんですけど」
「いや、ちゃんがいきなり素直だから」
私が素直だと、おかしいんですか!!
と、怒りたくなったけど、時間が勿体無い。
いただきます!と手早くお箸を取ると、ガツガツと食べ始めた。
やっぱりおいしい!
この前菜、どうやって作るのかなぁ。
本当に美味しくて味わっていると、冴木さんと視線がぶつかった。
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