ゲーム2日目。





今日も僕は、さんの家に来ていた。

今日、何かあるはずだ。
僕に『好き』と言わせる為の、何か。

さんは食べるのが大好きだ。
とても美味しそうに食べるから、僕はさんと食事に行ったりするのが大好きだった。

特にラーメンは大好物のようで。

それに、負けず嫌いだ。

そのさんが、このゲームに本気になってくるのは分かっていた。


そんな事を考えていたら、さんの腕が、首に回ってきた。



、さん…?」


珍しすぎる。
こんな、積極的な彼女は。





「アキラ君……」


甘えた声を出し、段々と唇に近づいていく。
いつもと立場が逆なのだ。
普段なら僕が迫って、さんから、なんて事は殆ど無いに等しい。

いつも求めている相手から誘われ、理性は完全に崩れ去った。



「ん…っぁ…ふ…!ちょ…っ!…!」


何故だろう。
さんから、誘ってきたのに。

さんが少し、拒む様子を見せたのが不思議だ。


「ん…んっ…ぅん…っ」


それでも気にせず、床に押し倒してしまった。
さっきより強い抵抗を見せるけど、そんなので中断したりできない。

「ぁ…っ!ちょ…!アキラ君…っ!やめ…!」


さんから誘ったんだろう?」


首筋に口付けられ、さんから甘い声が漏れる。
それがまた、僕を刺激する。


でも。

「駄目!!」


「・・・何で?」


やっぱり拒もうとする。

何なんだ?一体。




「・・・ゲームの事あかりちゃんに言ったら、アドバイス貰ってさー・・・。色仕掛けがいいって」



い、色仕掛け・・・?


やってみたけど、やっぱ無理だわ。
と、さんはケロリとした表情で言ってのけた。

・・・無理って、さん。

恋人のはずなのに。





一人虚しくなっていると、扉を叩く音がした。




ー、お茶持ってきたから開けてくれない?」


「ーー!!いっ今開ける!!」


いかがわしいことをしていた所為か、さんの声はギクっとしていた。
勢い良く僕を押しのけようとするので、渋々さんから離れる。

さんのお母さんは、彼女に似て、とても綺麗な人だ。
部屋に入るなり僕を見て優しく微笑み、お茶とケーキを乗せたお盆を側に置いてくれた。


「塔矢君、いらっしゃい。ごめんなさいねーいつもに碁、教えてもらっちゃって…」


「お、教えてもらってるんじゃないってば!!」


彼女も碁のプロだ。
だけど彼女のお母さんは、どうも僕がさんに碁を『教えている』と思っているらしい。


「はいはい。それよりあんた今日、指導碁の仕事入ってるとか言ってなかった?平気なの?」


「あっそうだった!やばい、もう行かなきゃ!!ごめん!」


「……」


無言のままの僕を残し、さんは出て行ってしまった。


「ごめんなさいね〜、塔矢君…ほんとにあの子は…」


「…いえ…」


昨日に引き続き、また逃げられてしまった…


自然にガクっと肩が下がって、溜め息まで漏れた。




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