ーゲーム3日目。





今日はさんと、映画を見に来ていた。
さんが見たがっていた映画だ。

でも。
可哀相だけど、今日は映画を見に来たわけじゃないんだ。


・・・今日こそ、好きだと言わせてみせる。


館内に入ると、映画は既に始まっていたが、あまりにもガラガラの上、暗さも手伝ってそこは酷く寂しげな場所に見えた。

余りのガラガラさに、驚いているのか、さんはキョロキョロと辺りを見回している。
と、その時。


「あ…っん…」


その声が耳に入ったらしいさんは、固まってしまった。

この映画館で、真面目に映画を見ているカップルなんていない。
緒方さんが、いつだったか口に出していた。
・・・そういう事をしているカップルばかりの、映画館があると。


「ああああアキラ君!!」


さん、どこ座る?」


「いや…あの…もう出よう!!他んトコ行こう!」


焦っているさんに、微笑んで答える。


「せっかく来たんだし、見て行こう?ね?」


そう言うと、僕は強引にさんの手を引いて、真ん中より少し上の、端の方の席に座らせる。
映画を見始めて15分程立つと、最初は周りが気になっていた感じのさんだったが、やっと画面の方に集中しだしたようだ。


・・・そろそろかな。



自分の手をさんの手に重ねる。
なでるように、複雑にさんの手に絡ませていくと、さんがピクンと反応するのが分かった。
自分の席を離れて、片足をさんの席につけた状態でのしかかる。


「…アキラ君?見えないんだけど…」


「今日は僕がさんに好きって言わせる為に頑張る事にするよ」


「はぁ?なに…んっ」


言いかけた言葉を最後まで聞かずに、唇を塞いだ。


「んん…っ」


途切れ途切れに、さんが抗議の声を上げるが、構わず激しく口づける。
さんが、こんな所で、こんな事をするのは絶対嫌だっていうのは分かっていたけど。


だけど、だからだ。
嫌がるところでないと、意味がない。


「〜〜っ!ぅんっ…!」


手を胸元の方に伸ばすと、さんが必死に抵抗してきた。


「…そうだよね。こんな所でなんて、さんはできないよね。・・・僕は大丈夫だけど」


「…私は絶対イヤだよ…っ」

・・・やっぱり、凄い嫌がりようだ。
少し悲しいものがあるけど、これなら効果絶大。


「・・僕のこと、好きって言ってくれたら止めてあげる」







あわわわわ…
アキラご乱心…!





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