言ってもらいたい。
どうしても。

「…私を」

ー好きだ、と。

「好きだと…」

言葉にしても、エドはギュっと口元を結ぶ。
ツキン、と心が痛んだ。
どうしてこんなに、我慢するんだろう。

我慢・・・。


<・・・我慢?>


何か、違和感を感じた。
だがそれが何なのか、突き止めてはいけないような気がして、すぐに行為に集中した。

「…っ」

エドが一層深く息を吐いたかと思うと、張り詰めていたものが、お互いに弾けた。
早く、もっと。
もっと深く、エドに触れなければ。

この、妙な靄を払えなくなる。



ー突き止めてしまう。


しかしそんな時に限って、机の上の電話がけたたましく鳴った。
この電話を破壊してしまおうか、と思うほどに憎らしくなったが、勿論、そんな訳にはいかない。

大人しくエドから離れ、電話を取ると、その隙にエドはロイの胸から抜け出し、落ちたままの書類をそのままに、部屋を出て行った。


電話を切ると、そこには勿論、もうエドの姿はない。
落ちた書類を拾うと、さっきの靄が、またー。


…我慢。
違ったら?
もし、エドが「我慢」などしていないのだとしたら?

好きだと言うのを我慢しているのではなく、ただ…。



ただ本当にー





本音 は




書類を拾う手が、止まった。

「…らしくもない」

自信に満ち足りた自分が思うような事ではない。
だが、エドと関係を持ってから、そういう事が当たり前になっているのは事実だった。
恋愛が、こうも人を変えるものだと、この年になって気がつくハメになろうとは。




ー明日は、来てくれるのだろうか。








ゲーム4日目。


今日も、エドは来た。
昨日から、ロイはずっと考えていた。

あと1日でゲームは終わるというのに、エドに好きだと言わせる自信がない。
このまま、うやむやにしたくはない。
何としても、好きだと言わせたかった。

暇そうに足を組み、欠伸をしているエドに、ようやくロイが声をかける。

「…鋼の」

「なんだよ」

「頼みがあるのだが」


そこまで言うと、やっと視線をロイに向けた。

「…なに」


トントン、と書類を揃えながら、ロイはゆっくり口を開く。

「もう少し、期間を増やさないか」

「つまり?」

「7日。つまり、あと2日、ゲームの期間を増やさないか?」

その申し出に、エドはキョトンと目を丸める。
「なんで?」と聞きたかったが、やめた。

ーエドも、思っていたのだ。
期間が足りないと。

あと1日で、ロイに好きだと言わせる自信がない。
だがロイに「期間を延ばしたい」と頼むのも嫌で。

なのでロイの申し出は、願ってもないものだった。

「いいぜ。じゃああと2日、な」

軽く伸びをすると、すっくとソファを立った。
すると、余裕を思わせる笑みを浮かべながら、ロイが近づいてきた。

「…必ず言わせて見せる」

軽く顎を掴まれるが、すぐにフイっとそっぽを向いた。
イライラした。
こんなに余裕をこいている、ロイに。









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