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ホっと、安堵した。
由美さんの方を見ると、まだ少し震えている。
…大丈夫なのかな。

「由美さん。もう体調は…」

「ああ、うん!もう元気!今日、ちょっと寒いけど…」

何とか震えを抑えようとしているのが分かった。
どうしようもなく抱きしめたくなったけど、自分の家の玄関でそんな事する訳にもいかない。
とにかく、此処は寒い。
中に入ってもらおうと促すと、由美さんは首を振った。

「…もう帰る。風邪、うつっちゃうと悪いから。…明日、会える?」

明日…。
必死でスケジュールを思い出す。
明日は何もないはずだ。
いや、何かあっても、明日は空けたい。

「うん。明日は何もないから」

そういうと、由美さんはホっとしたように笑った。
その瞳が少し、不安気に見えたのは、僕の気のせいだろうか…。

「良かった。…今日の夜、電話するね」

「…僕からするよ」


…何だか、情けない。
こんな、体調が悪い彼女に、家まで来させた挙句、電話まで由美さんから、なんて。

もうゲームなんか、どうでもいいんじゃないのか、とか、そんな事まで頭を回った。
由美さんが、こんなに不安そうに見えるのは、本当に僕の気のせいなのか・・・?

抱きしめたい。


手を僅かに動かすが、由美さんは「また明日ね」と言って、僕の側から離れてしまった。

なので僕も、その動かした手をギュっと握って、頷いた。



由美さんの、あの不安そうな顔が眼に焼きついて離れない。
強気の彼女が、あんな瞳をするなんて。

電話で「何かあった?」と聞いたけど、見事にはぐらかされてしまった。




ー明日になれば、分かるのだろうか。







ゲーム5日目。最終日ー




…遅い。



昨日の電話で、喫茶店の前で待ち合わせをしようという事になった。
だが、約束の時間を過ぎても由美さんは現れない。
何分だろうと、腕時計を見ようとした時、聞き慣れた声が耳に入ってきた。

「アキラ君!ごめんっ」


…由美さんだ。
ゼェゼェと息を切らした所を見ると、かなり急いで来たようで。

「ごめん私…寝坊して…」

申し訳無さそうに言う由美さんに「大丈夫だよ」と言う。
昨日の体調は、良くなったのか、とか、色々頭を回ることはあったけど、やっぱり、気になった。

昨日の由美さんの様子が。

だが、いくら気になったからと言って、会ってすぐ、単刀直入に聞く訳にもいかない。

「中、入ろうか」

言うと、コクンと頷いた。

「…アキラ君に話、あるんだ」

「…話?」


また静かに、頷くと、「入ろう」と今度は僕が促された。
ドクン、と心臓が鳴った。
話。
昨日の由美さんの様子に関係すること、なんだろうか。


中に入ると、由美さんも僕も、コーヒーを一つずつ頼んだ。
他愛もない話を、笑いながらしていると、由美さんのお腹がグーと鳴ったので、僕も由美さんも大笑いしてしまった。

「何か頼めば?」

「ん。頼もうかな…」

メニューを見つめる由美さんに、僕は内心、ドキドキとしていた。
いつ、本題に入るのか。

そしてその本題は、これから二人が一緒にいられなくなるような、そんな内容だったらどうしようかと。

それが気にかかって、仕方なかった。







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