するとちょうど、アルの声が聞こえた。
夜中居なくなった兄を探しているようだ。
「アル!下にいる!」
二階に向かって叫ぶ。
するとロイは口元を上げて、エドの頭に手を乗せた。
「やめろよ、それ」
子供扱いが気にいらない。
手を振払うと、ロイはまた、フッと笑った。
−ガチャガチャ。
アルが鎧の身体を鳴らしながら下へ降りてくる。
「兄さん!早いね。起きたら居なかったから、少し驚いちゃったよ」
「あ、ああ」
「…夜中、どこ行ってたの?」
「大佐の部屋。ちょっと話してたらそのまま寝ちゃってさ。…大佐に悪いことした」
後頭部を掻きながら言うエドに、アルは「悪いこと?」と首を傾げる。
そこでエドは、自分のせいでロイがソファで寝ることになった、という事実を告げた。
「大佐、優しいね」
アルの言葉に、エドは黙っている。
すると、台所の方から良い匂いが漂ってきた。
ほどよく焼けた、キツネ色のトーストや、こんがりと焼け目のついたベーコン等が3人分。
それを見て、アルが慌てる。
「あ、大佐!僕は…」
食べれない事を申し訳なさそうに告げると、ロイもああ、と気がついた。
「鋼の。二人分、どうだい?」
「…食う」
言うと、エドの方にアルの分の皿が寄せられた。
席につき、からっぽのお腹に食べ物を入れていく。
何てことのない朝食。
だが素直に美味しいと思った。
『大佐、優しいね』
アルの言葉が、突然蘇る。
「…まぁな」
ポソリと漏らすと、アルが首を傾げた。
ロイも不思議な顔をする。
「…?兄さん、寝ぼけてるの?」
「早起きは慣れてないのか?鋼の」
「う、うるせーな!」
モグモグと口を動かし、どんどん食べ物を放り込んでいく。
朝食を終え、ロイが玄関でコートを羽織る。
「いってらっしゃい」
アルがにこやかに言う後ろで、エドも面倒そうに「いってらっしゃい」と言った。
それを見てロイはフッと笑うと、「いってくる」と家を出た。
「兄さん、図書館行こう」
エドの方を振り返るが、エドは扉を見つめたまま動かない。
不思議に思ったアルは、身を屈めて首を傾げる。
「あ、いや…何でも…」
まだ扉を見てしまう。
自分の様子を、アルが気にするのも無理はないと思う。
自分でも変だと、感じている。
ロイが出て行っただけで、その場の空気が薄くなったような。
違和感を覚えた。
…これを、寂しいだとか、そういった感情だとは認めたくないのだが。
だが…。
「…兄さん?」
もう一度呼ばれ、エドはハッとし、アルに笑みを向けた。
「…行くか!図書館」
立派な建物の中には、ズラリとおびただしい程の本の数。
司令部に近く、良い図書館があるというのはロイから教えてもらった情報だった。
黙々と本のページをめくるエドとアルだが、受付の娘の座るずっと奥に、まだ本が並んでいるのに気がついていた。
どうやらお偉いさんしか読めないらしい本である事は、その雰囲気で充分分かった。
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